お茶碗を持って食べる理由と和食の決まり事
今回は日本人が食事をする際にお茶碗を持って食べる理由と和食(日本料理)の盛りつけや器などの決まり事についてご紹介したいと思います。
最近は欧米の文化が日本でも取り入れられ、お茶碗を持たなくて済むことが増えています。
では、なぜ器を手で持って食べないと行儀が良くないと親が子に教えるのでしょうか。
日本人が茶碗を持って食べる理由、和食の決まり事とは!
お茶碗を持って食事をする理由
テレビや映画の時代劇などで食事風景が映し出されることがありますが、その場面を思い出してみてください。
その映像では床にお膳を置いて食事をとり、その上にお茶碗や器がいくつか並んでいますね。
そして、現在でも茶懐石料理、祝宴や法事の会席料理などでは目の前に1人ずつのお膳が出されることが多々あります。
このお膳の場合に器を持って食べないと、座っている自分のお腹付近まで顔を近づけなければ食べることができず、大変不格好になってしまいます。
そして、もっと古い時代の食事風景では、床にお盆が置いてあることも多いです。
このお盆の場合は、体をほぼ横向きにしないと食べることができず、非常に食べづらくなってしまいます。
このようなことから、器を手で持つ方が自然で食べやすく、日本では昔からそうやって食事をするのがあたり前になっています。
これが、お茶碗をちゃんと持って食べないと行儀が悪いよ!と親が子にしつけてきた理由です。
それでは次に、和食の中で決められている事柄についてご紹介したいと思います。
和食(日本料理)の決まり事
和食は元々中国から伝えられ、日本で独自に発展してきた文化の1つで、400年以上の歴史があるとされます。
古代中国の考え方「陰陽五行説」
陰(いん)と陽(よう)について
古代中国では自然界のあらゆるものを陰と陽の2つに分けました。
例えば表が陽で裏が陰、奇数が陽で偶数が陰という具合です。
(具体例)陰陽道や陰陽師など。
この陰と陽の2つがやがて、五行というものと結び付いて「陰陽五行説」という考え方になります。
五行(ごぎょう)とは
五行とは、自然界は5つの要素で成り立っているという考え方で、この要素には木(もく)火(か)土(ど)金(ごん)水(すい)の5つがあります。
そして、五行の「行」という言葉には循環するという意味があります。
■「木は燃えて灰になり土に帰ります。そして鉱物となり、水に流されて再び木に吸い上げられます」
【 木⇒ 火⇒ 土⇒ 金⇒ 水 】
この5つの要素が繰り返されることが自然界の循環です。
そして、暦の中の曜日もこの陰陽五行説からきています。
日(太陽)が陽で、月が陰です。これに先ほどの 木、火、土、金、水の5つが合わさり、陰陽と五行の循環から曜日が「日、月、火、水、木、金、土」となって1週間の7つができあがっています。
ちなみに宇宙の惑星も、日(太陽)、月、火星、水星、木星、金星、土星という名がつけられていて、暦のひのえ寅や、つちのと卯などといった「六十干支」もそうです。
そして暦は「き、ひ、つち、か、みず」の5つと12支で日が数えられており、「5×12=60年」この60年で暦が一回りすることから【還暦】というようになっています。
そして、中国から伝えられた和食もこの「陰陽五行説」に深く関係があるのです。
表と裏について
包丁にも表と裏があるのはご存知でしょうか?
和包丁の場合、刃のある方(斜めになったそりがある方)が表です。
お刺身や大根を右から順に切っていき、切り終えると包丁の表側に食材がきます。
「食材に手を添える方が包丁の裏側で、そこから材料を切ることで反対側の表に移動します」
そして、盛りつけをする時は刃に当たっていた切り口の方を上にします。
「これには、その切った断面の方が仕上がりがきれいという理由があります」
このあと盛りつけをするのですが、器の形にも陰と陽があり、丸い器が陽で角のある器が陰となります。
陰と陽~表と裏の(例)
上記のようにまぐろのお刺身を右から切ったとします。
このまぐろを切った時に包丁の表(陽)に切り身があたっていますので、盛りつける場合は角のある陰の器に盛ります。
この盛りつけが「 陽→陰 」です。
まぐろのお刺身が角のある器に盛りつけてある事が多いのはこの決まり事からです。
■ お刺身の切り方で平造りと呼ばれる手法の場合がこの切り方と盛りつけ方法になります。
反対に、左から刺身を切る場合(てっさや鯛の薄造りなど)は、刃の無い平らな裏側(陰)に切り離した身があたっていますから丸形の陽の器に盛りつけます。
薄く切った刺身が丸い器に菊の花形に盛りつけてあるのがその例で、角のある器では見た目もあまり良くありません。
そして、こちらが「 陰→陽 」の盛りつけ方法です。
■ お刺身の切り方でへぎ造りと呼ばれる手法の場合がこの切り方と盛りつけ方法になります。
※ 三種盛りや五種盛りといった刺身の盛り合わせの場合は、両方の切り身を合わせて盛りますので器の形にこだわらないことも多いです。
このように陽から陰、陰から陽に盛りつけて、陰と陽が互いに相重ならないようにします。
そして、日本料理店で出されるお刺身はこの方法で盛られている場合が多く、見栄えやバランスも良くてなっていますね。
陽の数(奇数)について
奇数はどちらかというと、偶数よりも良い数と考えられています。
お刺身は一般に奇数の3.5.7切れのいずれかで盛りつけてあることが多いですが、この数にも決まりがあります。
料理とは少し離れますが、こちらは暦の奇数例ですのでご覧ください。
季節の節目「五節句」
この五節句は江戸時代に幕府が公的な祝の行事とした日のことです。
1/7 | 人日(じんじつ) | 七草の節句 |
3/3 | 上巳(じょうし) | 桃の節句 |
5/5 | 端午(たんご) | 菖蒲の節句 |
7/7 | 七夕(しちせき) | たなばたの節句 |
9/9 | 重陽(ちょうよう) | 菊の節句 |
このように全て奇数月の奇数の日になっています。
そして、この場合の9は苦という意味ではなく、奇数の陽の数の中で一番大きな縁起の良い数ということで、これが2つ重なることから重陽の節句と呼ばれています。
また、この奇数が縁起の良い数という考え方から、料理を盛る場合も陽の数(奇数)にすることが多く、3.5.7切れのいずれかで盛りつけしてある理由です。
※ 自然界には陽と陰の2つが存在していますが、どちらかが欠けたり、陽が良くて陰が悪いという訳ではなく、夜(陰)があるから朝(陽)が来て、女性(陰)と男性(陽)が存在しているからこそ生命(子孫)の維持ができるように、お互いが相対して保たれています。
五味、五色、五法について
最後に、五味、五色、五法についてです。
和食はほぼ、この五味、五色、五法の組み合わせで作られていて、この味、色、方法も陰陽五行説からきたものです。
【五味】
五味とは人間の味覚は5つあるというもので、「甘、辛、苦、酸、鹹(かん)」の5種類です。
※(鹹は塩辛いという意味です)
【五色】
この五色は青(緑)、赤、黄、白、黒(紫)の5つで、寺院に掛けられている幕や、能舞台の揚幕もこの五色になっており「木、火、土、金、水」の各色は以下のように表されています。
■ そして、五色の揚幕には彼岸へ通じる結界という説があります。
木 | 青 |
火 | 赤 |
土 | 黄 |
金 | 白 |
水 | 黒 |
【五法】
五法とは生、蒸す、焼く、煮る、揚げるの5つの調理法です。
和食はこの五味、五色、五法を組み合わせて見栄えよく、栄養バランスのとれた料理に仕上げてあります。(※ 決まり事については、流派によって若干異なる部分があります)
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今回は和食の決まり事についてご紹介いたしました。
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次回は違うメニューでお目にかかりたいと思います。最後まで閲覧していただき、ありがとうございました。