刺身のつまの妻と褄の違いと語源【つまの一種の剣(けん)の意味】

 
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【刺身のつまの詳しい内容】

今回は刺身や椀物に添える野菜や海藻類の「つま」について詳しくご紹介したいと思いますので和食調理や献立作成の参考にされてはいかがでしょうか。

刺身のつまの漢字の違いと剣の意味、語源

刺身のつまとは

刺身に添える野菜、花、海藻類などの総称で大根、人参などを細く切ったものは剣(けん)と呼ばれます。

このつまは盛りつけ方法によって呼び名が変わり、刺身に敷いたときは「敷きづま」、材料に立てかけたり、離して柱のように盛りつけた場合は「立てづま」といいます。

そして、飾り切り野菜や花などは「飾りづま」といい、菊花、花穂じそ、花付ききゅうりなどがあります。

また、青じそ、わさび、辛み大根、しょうがといった殺菌作用の強い野菜類や木の芽、ゆずのように香りを楽しむもの等があります。

他にも防風、金魚草、春らん、紅たで、ばくだい等があり、その種類はさまざまで、主材料として使える菜の花、たけのこ、わらびなどを季節に応じて使うことも多く、盛りつけたときの調和やバランス、見栄えに配慮した食材を用います。

つまの漢字2つ【妻と褄の語源】

刺身や椀盛りに使われる添え野菜のつまには「妻」と「褄」という2つの字があてられますが、それぞれ違う語源が存在します。

【妻】

こちらの字をあてる説は主材料(主人)を支えて、殺菌作用などで料理全体の調和をとることから夫婦にたとえられています。

【褄】

この字には「端」という意味があります。

主材料の端に添えることからこの字をあてるとの説がありますが、料理の専門書などでこちらが使われることは非常に少なく、刺身を大皿盛りや船盛りにする場合は器の中央に「つま」を置くことも多いです。

そして、焼き物の串打ち手法の中で細長い材料の端を丸めて刺す片褄折り(かたづまおり)両褄折り(りょうづまおり)には褄の字が使われ「刺身や椀物」と「焼き物」では漢字が区別されています。

【調理例】

さよりの片褄折り(わらび串)

したがいまして、添え野菜や海藻類などに「褄」の字をあてる理由としては「妻」よりも信憑性が低いと思われます。

代表的なつまの剣(けん)とは

細切りにした野菜の鋭い様子を剣(つるぎ)に見立てることからこの名があり「つま」と呼ばれるものの一種です。

剣の中では大根が代表的ですが、他にも人参、きゅうり、かぼちゃ、わかめ、みょうが、きゃべつ、玉ねぎ、わさび等を使う場合があります。

みょうが剣の使用例

さよりの藤造り

さよりの藤造り,晩春から初夏の刺身,5月の献立

さよりの藤造りの切り方手順

【追記】

わさびは包丁で切ると辛みが出ませんので剣として使うこともあり「針わさび」ともいいます。

剣の切り方2種

繊維を切る方法の【横けん】

大根けん,横けん,よこ

こちらは繊維を切りますので丸めることが多く、刺身の下に敷くことから「敷きづま」といいます。

【盛りつけ例】

IMG_2851

繊維にそって切る場合の【縦けん】

IMG_2847

こちらは繊維と同じ方向に細く切り、その繊維をいかす切り方ですので、水でさらしてパリッとさせたあとに立てて盛ることが多いです。

縦けんは先ほどの横けんに対して、刺身の近くや器に立てることから「立てづま」といいます。

【盛りつけ例】

縦けん,だいこん,大根,盛りつけ

刺身のつまは食べるもの?

刺身につまを添える理由【先人の知恵】

つまを刺身に添えることには理由があり、魚を生で食べる場合が多いですから毒消し効果がある食材が使われます。

特に多いのが大根、青じそ、しょうがといった「殺菌作用」が強い食材で、魚と一緒に食べることで【食あたりを防ぐ】という先人達の知恵と工夫がこらされています。

また、寿司にしょうがの甘酢漬け(がり)が置かれているのも同じ理由ですので、刺身の「つま」も食べる目的で添えてあります。

ですから、衛生的な効果を得るためにもできるだけ食べるようにして、季節感や色合いを考えながら見栄えが良くなる食材で盛りつけを楽しんでいただきたいと思います。

※ そのままでは食べづらい場合や量が多いときでも捨てず水洗いして味噌汁の具にしたり、炒めるなどして火を通すと、殺菌効果はなくなりますが食べやすくなります。

その他のつまの【椀づま】とは

特に刺身に添える野菜類を「つま」といいますが、汁物の場合は主材料を「椀だね」、その具材に添えるものを「椀づま」と呼んでいます。

刺身と汁物どちらのつまも主になる材料を引き立てる目的で使用しますので、魚の味や椀だねの風味をおぎなえ、なおかつ季節感のある食材を使います。

【吸い物の調理例】

海老つみれ、結び三つ葉松葉ゆず

えびつみれの吸い物,結び三つ葉,松葉柚子,椀物の献立

この場合は海老つみれが椀だね、結び三つ葉が椀づまです。そして、香りの松葉ゆずは「吸い口」といいます。

結び三つ葉の作り方手順

【手順が分かると簡単】束ね三つ葉の作り方・結び三つ葉の応用編

松葉ゆずの切り方手順3つ

【ゆずの基本的な使い方をご紹介している動画です】食材の切り方、使い方など!

桂むきとは

材料を帯状にむく手法で、大根、人参、きゅうりなど、断面の丸い食材を使います。

桂むきの語源、由来

桂の木の皮がたて方向に長くむけることから名がついたという説や京都、桂の女人集「桂女(かつらめ)」が頭に巻く白い布に形が似ていることからという説があります。

■ 桂むきの詳しい内容と大根けんの切り方につきましては≫「桂むき上達のコツ5つ【大根けんのポイント】簡単練習方法+たて横の盛りつけ例」に掲載しておりますので参考にされてはいかがでしょうか。

大根けんむき,だいこん剣

注:桂むきをされるときは、包丁に十分注意して手をけがしないように仕上げてください。

【関連】

大根の飾り切りを見る

【料理の語源、意味、由来】

あしらいとは、器に盛りつけた料理を一層引き立てる目的で添える「野菜類や花」などの総称です。また「あしらう」という言葉には、とり合わせるといった意味があり、季節の葉を料理にあしらう、飾りに花をあしらう等の使い方をします。【関連】和食の飾り切り手順一覧 ■≫食材の下処理方法一覧を見る

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今回は、つまの語源や意味をご紹介いたしました。

野菜の切り方につきましては≫「飾り切り【100選】切り方とコツ一覧」に掲載しておりますのでお役立ていただければ幸いです。

次回は違うメニューでお目にかかりたいと思います。最後まで閲覧していただき、ありがとうございました。